実は、タトゥーの方が脱毛よりも痛みが強く、痛みに耐える必要である。
タトゥーでは皮膚の深い層まで針が到達し色素を注入するため、痛みが長時間、断続的に続く。
そして、麻酔が使えないため、痛みに耐える覚悟が必要だ。
また、タトゥーと脱毛を併用する場合、施術の順序や注意点は押さえておくべきである。
タトゥーを先に入れてしまうと、その部分への脱毛施術が難しくなるほか、万が一タトゥー部分に脱毛レーザーが当たった場合には、火傷や水ぶくれといった皮膚トラブルが発生する恐れもあるため、正しい知識が必要だ。
この記事では、タトゥーと脱毛の痛みの違いや、併用時の重要なポイントについて詳しく解説する。
施術時の注意点、そして効果的な施術方法について、経験と専門的知見をもとに徹底的にまとめたのでぜひ参考にしてほしい。
脱毛とタトゥー(入れ墨・刺青)どっちが痛いのか?答えはタトゥー
脱毛とタトゥー(入れ墨・刺青)どっちが痛いのか
結論から言えば、個人差はあるがタトゥーの方が痛みが強く、長時間にわたって続くため、脱毛に比べて我慢が必要だ。
タトゥー施術では、皮膚の深い層まで針が到達し、色素を注入するため、その痛みは「じんわりとした」持続的。
脱毛が一瞬の刺激であるのに対し、タトゥーの痛みは断続的に感じるため、どちらが痛いかと問われれば、タトゥーの方が痛みが強いと言える。
私のところに相談いただく方もタトゥーの方が痛みを感じると言っていた。
タトゥーの痛みが強い理由
まず、タトゥーの施術では針が皮膚の「真皮層」に達し、色素を注入する。
この真皮層には痛みを伝達する神経が集中しており、施術のたびに強い刺激が伝わるのだ。
さらに、デザインを完成させるために針が何度も同じ箇所を繰り返し刺すことになるため、痛みがじわじわと蓄積される。
こうした断続的な痛みは、時間が経つにつれ身体的な疲労も伴い、初めてのタトゥー施術者には大きな負担となる。
施術時間と痛みの蓄積
タトゥーは施術時間も痛みの一因となる。
小さなデザインでも1〜2時間、大きなデザインでは数回に分けて数時間に及ぶ場合もあるため、施術が進むにつれて皮膚が過敏になり、痛みが増していく。
脱毛では一度の施術時間が短く、次回までに皮膚が回復するため、持続的な痛みを感じることはないが、タトゥーの場合、長時間にわたる耐久力が必要となる。
実は、タトゥーの施術では、1平方センチメートル(1cm × 1cm の正方形の面積)あたり10〜100回以上針が刺されるのが一般的である。
これは、デザインの細かさや色の濃さにより変動するが、通常、1秒間に50〜300回の速さで針が皮膚に当たるとされている。
シンプルなラインや小さな文字のタトゥーであっても、1平方センチメートルあたり数十回は刺入。また、ディテールが多く濃い色を必要とするデザインの場合、同じ箇所に何度も針を重ねて刺すため、さらに多くの刺入が求められる。
このため、部位によっては強い痛みが伴うことになる。
これに対し、脱毛の場合は1平方センチメートルは基本的に1発の照射(レーザーまたは光)で通り過ぎていくので、タトゥーの方が痛いのは明白だろう。
まとめると、
- タトゥー:1平方センチメートルあたり約10〜100回の痛み
- 脱毛:1平方センチメートルあたり約1回の痛み
となるのだ。
加えて、麻酔の可否も影響してくる
タトゥーや脱毛における痛みの感じ方において、麻酔の使用は大きな影響を与える。
タトゥーの施術において彫り師が麻酔を施すのは違法であり、麻酔は医療行為に該当するため、専門の医師資格が必要とされるからだ。
このため、タトゥーの施術では基本的に麻酔なしで痛みに耐える必要がある。
一方、脱毛の場合は医療脱毛であれば麻酔の使用が認められている。
※脱毛サロンは医療機関ではないので麻酔NG
特に医療機関で行う医療レーザー脱毛では、皮膚科医や医療資格を持つスタッフが施術を行うため、痛みが強い場合には麻酔クリームや局所麻酔を使用可能。
この点からも、痛みを感じやすいのは脱毛よりタトゥーと言える。
脱毛とタトゥーが痛い場所ランキング
痛みの感じ方には個人差があるものの、一般的に痛みが強いとされる部位を、脱毛とタトゥーの観点からランキング形式でまとめてみた。
なお、根拠を示すために難しい医学用語も含めているが、さらっと流していただいても構わない。
- VIO(デリケートゾーン)
- 脇
- 首(前・側面・後部)
- 腕や背中
- 背骨
【1位】VIO(デリケートゾーン)
VIOゾーンは、数多くの神経が集まる非常に敏感な部位である。
具体的には、陰部神経(いんぶしんけい)がこの部位を支配し、外性器(がいせいき)と会陰(えいん)に分布している。
陰部神経は数千もの感覚ニューロンを持ち、局所的に非常に高い密度で痛覚を伝える役割を果たす。
加えて、坐骨神経(ざこつしんけい)が分枝しており、この太い神経は直径1cm近くにもなることがあり、痛覚や感覚の強さに大きな影響を与える。
このため、VIOの施術では強い痛みを感じやすく、長時間の施術が続くと耐久力が必要とされる。
【2位】脇
脇には、皮膚1平方センチメートルあたり約200個の神経終末が分布しており、腋窩神経(えきかしんけい)をはじめとして正中神経(せいちゅうしんけい)や筋皮神経(きんぴしんけい)が通っている。
この部位はまたリンパ節が約20〜40個存在し、汗腺も多いため、刺激を受けやすくなっている。
脇の神経終末の密集度は他の部位よりも高く、特に圧力や熱に敏感であるため、施術中には特に痛みが強く感じられやすい。
【3位】首(前・側面・後部)
首には、約5000〜6000本の感覚神経が密集しているとされ、特に頸神経叢(けいしんけいそう)が大きく関与している。
前面には迷走神経(めいそうしんけい)と頸動脈洞神経(けいどうみゃくどうしんけい)が走り、側面には副神経(ふくしんけい)があり、後部には大後頭神経(だいこうとうしんけい)や小後頭神経(しょうこうとうしんけい)が分布する。
首の神経密度は特に高く、動脈や静脈も同時に走行しているため、1平方センチメートルあたりの神経密度は他の部位の1.5倍程度とされる。
このため、タトゥー施術時には非常に強い痛みを感じることが多い。
【4位】腕や背中
腕には、皮膚1平方センチメートルあたり約100〜150個の神経終末が分布しており、比較的鈍感とされる部位も多いが、関節部分(肘や手首など)には神経が集中しているため、部分的には痛みを感じやすい。
また、橈骨神経(とうこつしんけい)や尺骨神経(しゃっこつしんけい)が通っている。
背中には約60〜100個程度の神経終末が1平方センチメートルあたりに分布しており、広範囲をカバーする脊髄神経(せきずいしんけい)が各椎骨(ついこつ)から分岐しているため、背中の中央部分、特に脊柱(せきちゅう)付近は敏感である。
【5位】背骨
背骨には、各椎骨から約31対の脊髄神経(せきずいしんけい)が出ており、感覚と運動を司る神経が複雑に分布している。
また、交感神経幹(こうかんしんけいかん)が背骨に沿って走行しているため、脊髄周辺には約4000本以上の神経が密集しているとされる。
脊柱の一部である腰椎(ようつい)や胸椎(きょうつい)には太い神経が通っており、神経の密度が高い部分では1平方センチメートルあたり約200個の神経終末があるため、施術の際には非常に鋭い痛みが発生しやすい。
また、骨と皮膚の間にクッションとなる筋肉や脂肪が少ないため、針の刺激が直接神経に伝わりやすい。
脱毛とタトゥーが痛すぎて途中でやめたという人もいる
脱毛もタトゥーも、痛みがあまりに強いため、途中で断念する人が少なくない。
今まで、ご相談いただく方の割合を見てみると、特に麻酔が使用できないタトゥーの方が断念する人が多いように感じる。
先ほども少し触れたが、タトゥーの施術では、デザインによっては数時間から数日にわたり痛みに耐え続ける必要があるが、麻酔が使えないため、痛みを和らげる手段が限られている。
そのため、「これ以上は無理」と途中でリタイアする方や、デザインの範囲を小さくする方が多いのが現状である。
一方で、医療レーザー脱毛では医療機関での施術に限り麻酔クリームや局所麻酔が使用できるため、痛みを和らげながら施術を続けることが可能である。
麻酔があっても途中でギブアップしてしまう人もいるが、痛みの程度に応じて麻酔の有無を選べる点で、タトゥーとは大きく異なる。
タトゥー上に誤って脱毛のレーザーを当てると火傷や水ぶくれができる理由
タトゥー上に誤って脱毛のレーザーを当ててしまうと、火傷(やけど)や水ぶくれができる理由は、レーザー光がタトゥーの色素に強く反応するためである。
脱毛のレーザーは、毛根のメラニン(黒い色素)に反応して熱を発生させ、毛根を破壊することで脱毛効果を得る。
この性質上、レーザーは黒や濃い色に対して特に強く反応するため、タトゥーのインクが皮膚の中にある場合、その色素がレーザー光を吸収してしまう。
タトゥーのインクは皮膚の真皮層にあり、通常は青や黒などの濃い色が多い。
この濃い色のインクがレーザー光を吸収すると、瞬時に高温(200〜300度にも達することがある)が発生するのだ。
この高温は皮膚に大きな負担を与え、火傷の原因となる。
レーザーの熱によりタトゥー部分の皮膚が急激に高温になり、周囲の組織がダメージを受ける。
このとき、皮膚細胞が損傷を受けることで炎症が発生し、皮膚内部に水分が溜まって水ぶくれ(浮腫、ふしゅ)として現れるのだ。
これは体が損傷部位を保護しようとする防御反応であり、火傷による熱ダメージの一種。
このような理由から、タトゥーが入っている部分に脱毛のレーザーを当てることは非常に危険であることが分かる。
タトゥーを入れている方が脱毛を希望する場合、タトゥー部分を避けた施術が求められるか、脱毛を受ける前にタトゥーの位置を医師や施術者にしっかりと伝える必要がある。
【タトゥーをまだ入れていない方】タトゥーは脱毛を先にしてから入れるのが良い理由
これからタトゥーを考えている場合は、先に脱毛を済ませてからタトゥーを入れることをおすすめする。
理由は2つだ。
理由1:タトゥー後の脱毛が非常に難しい
先ほども解説したが、タトゥーを入れた後に、その部位の脱毛が必要になった場合、施術が非常に困難となる。
脱毛のレーザーは、毛根に含まれるメラニン(黒い色素)に反応して熱を発生させる仕組みであり、毛根を破壊することで脱毛効果を発揮する。このレーザーは黒や濃い色に強く反応するため、タトゥーのインクにも反応してしまう。
タトゥー部分があると、レーザーによる脱毛施術ができないため、タトゥーを避けた範囲でしか脱毛を行えなくなる。
つまり、タトゥーを入れた部分には毛が残ってしまう可能性が高い。
さらに、タトゥーを含むデザインによってはレーザーが当てられない範囲が広がり、希望する箇所を満足に脱毛できないことが多い。
理由2:タトゥー部分にレーザーが当たると皮膚トラブルが発生する
こちらも、前述の通り脱毛レーザーは黒い色に強く反応する。
そのため、タトゥー部分にレーザーが当たると、インクが熱を吸収し、皮膚の中で高温が発生する。これにより、火傷(やけど)や水ぶくれなどの皮膚トラブルが発生する可能性が高くなるのだ。
レーザー光がタトゥーのインクに吸収されると、瞬時に200〜300度以上の熱が生じ、皮膚細胞が損傷を受けてしまう。
その結果、炎症反応が起き、火傷や水ぶくれ、色素沈着などの肌トラブルが生じることがある。
また、重度の火傷が残った場合はタトゥーのデザインが歪んでしまうこともあり、タトゥーの美観を損なう可能性もある。
以上の理由から、タトゥーを考えている場合は、あらかじめ脱毛を済ませておくことが良い。
特に、デザインが入る予定の部位は事前に脱毛しておくことで、タトゥー後に無用な肌トラブルを避けることが可能だ。
【タトゥーがすでに入っている方】医療脱毛でタトゥー上の照射はほぼ不可能。針脱毛や美容電気脱毛の選択を推奨
結論から言えば、医療脱毛でタトゥーが入った部位に直接照射を行ってくれるクリニックはほぼ存在しない。
タトゥー部分を避けて照射することは可能なものの、タトゥーそのものに照射を行うことはリスクが高く、多くのクリニックが断っている。
タトゥーが入っている部分も含めて確実に脱毛を行いたい場合は、「針脱毛」や「美容電気脱毛」が推奨される。
これらの方法は、レーザーではなく、毛穴一つ一つに針を差し込んで電流を流し、毛根を破壊するため、タトゥーの色素に反応する心配がない。
ちなみに、「針脱毛」と「美容電気脱毛」は脱毛方式は似ており、医療機関で行うのか、エステサロンで行うのかの違いがある。
- 針脱毛:医療機関で行う高出力の永久脱毛。毛穴に針を入れて電流を流し、確実に毛根を破壊。
- 美容電気脱毛:エステサロンで行う電気脱毛。針脱毛と同じ仕組みだが医療機関ではないため永久脱毛という表現は使用できない。
このため、タトゥー部分も含めた全体的な脱毛を希望する場合には、針脱毛や美容電気脱毛を専門に行っているクリニックやサロンを選ぶとよい。
タトゥーの美観を損なわず、確実に脱毛を行いたい方には、最も安全で効果的な方法といえる。
まとめ
タトゥーと脱毛の痛みについて比較すると、一般的にはタトゥーの方が痛みが強く、持続的であるため、耐久力が求められる。
タトゥーは皮膚の深い「真皮層」に針が到達して色素を注入するため、痛みが断続的に続くのが特徴である。また、麻酔が使用できないため、痛みに耐える覚悟が必要だ。
一方、脱毛は施術時間が短く、医療機関での医療脱毛では麻酔の使用が可能なため、痛みを緩和しやすい点でタトゥーとは異なる。
さらに、タトゥーと脱毛を併用する場合には順序も重要で、タトゥーを入れる前に脱毛を済ませるのが望ましい。
タトゥー部分にレーザーを当てると、火傷や水ぶくれなどの皮膚トラブルが発生するリスクが高いためだ。
すでにタトゥーが入っている場合、タトゥー部分に医療脱毛のレーザーを当てることは避け、針脱毛や美容電気脱毛を選択するのが良い。